海外に住んでいる20代から30代の皆さん、「日本の印鑑証明書が必要になることってあるの?」「海外からどうやって取得すればいいの?」といった疑問や不安を抱えていませんか? 慣れない海外での生活に加え、日本での複雑な手続きに直面すると、何から手をつけて良いか分からず、さらに不安が募ることもあるでしょう。特に、海外に住民票がないと日本の印鑑登録は原則できませんから、日本の実印や印鑑証明書が必要になった時に困ってしまう方も少なくありません。
実は、海外在住者でも、不動産売買や相続手続き、車の売買、さらには公正証書の作成など、日本の印鑑証明書が必要となるケースは多々あります。しかしご安心ください。一時帰国して手続きを行う以外にも、海外にいながら印鑑証明書の代わりとして利用できる「署名証明(サイン証明)」という重要な手段があるんです。
この記事では、「海外在住者の印鑑登録・印鑑証明」に関するあなたの疑問を解消するため、以下の点を徹底的に解説します。
- 海外在住者が印鑑登録できない理由と、どんな時に印鑑証明書が必要になるのか
- 印鑑証明書の代わりになる「署名証明書(サイン証明)」とは何か、その概要と役割
- 署名証明書を日本の在外公館で取得する方法
- 不動産登記や相続など、具体的な利用シーンと注意点
- 外国籍の方の印鑑登録についても解説
この記事を読めば、海外在住中に日本の印鑑証明書が必要になったとしても、慌てずに適切に対応できる具体的な方法が分かります。もう「どうすればいいの?」と悩む必要はありません。読み終える頃には、あなたの不安が解消され、日本の重要な手続きもスムーズに進められるようになるでしょう。さあ、一緒に解決策を見つけていきましょう。
海外在住でも印鑑登録・印鑑証明は必要?
「海外に住んでいるけれど、日本の印鑑証明書が必要になることってあるの?」と疑問に感じている方もいるかもしれません。結論から言うと、海外在住者であっても、日本の印鑑証明書が必要となるケースは多々あります。しかし、国内に住民票がない海外在住者は、基本的に印鑑登録を行うことができません。
海外在住者の印鑑登録の可否
まず、印鑑登録について解説しましょう。印鑑登録とは、個人の印鑑が本物であることを公的に証明するために、市区町村にその印鑑を登録する制度です。登録された印鑑は「実印」と呼ばれ、その実印が登録されていることを証明する書類が「印鑑登録証明書(印鑑証明書)」となります。
この印鑑登録は、日本の住民基本台帳に登録されている、つまり日本国内に住民票がある人が対象となります。そのため、海外に転出届を提出し、日本の住民票を抜いている方は、原則として日本の市区町村で印鑑登録を行うことはできません。
例えば、あなたが海外赴任や移住のために日本を出国し、住民票を海外に移した場合、日本の役所では印鑑登録の申請を受け付けてもらえません。これは、印鑑登録が住民票に基づいているためです。すでに印鑑登録をしていた場合でも、海外転出届を提出すると同時に印鑑登録は自動的に廃止されます。
では、海外在住者が日本の実印や印鑑証明書が必要になった場合、どうすれば良いのでしょうか?これについては後述しますが、主に「一時帰国して手続きを行う」か、「印鑑証明書の代わりとなる書類を利用する」という方法が考えられます。
印鑑証明書が必要となるケース
海外に住んでいても、以下のような場面で印鑑証明書(またはそれに準ずる公的書類)の提出を求められることがあります。
- 不動産の売買・登記:日本国内に所有している不動産を売却したり、贈与したりする際に、本人の意思表示であることを確認するために印鑑証明書が求められます。特に、所有権移転登記の際には必須とされています。
- 相続手続き:日本国内にある財産(不動産、預貯金、株式など)の相続手続きにおいて、遺産分割協議書を作成する際や、名義変更を行う際に相続人全員の印鑑証明書が必要となる場合があります。
- 自動車の売買・譲渡:日本で所有していた自動車を売却したり、名義変更したりする場合に、印鑑証明書が求められることがあります。
- 住宅ローンの契約:日本に住宅を購入する際に、ローン契約を締結する際に印鑑証明書が必要となる場合があります。
- 公正証書の作成:遺言書や任意後見契約など、法的に有効な公正証書を作成する際に、公証役場で本人確認のために印鑑証明書を求められることがあります。
- 法人の設立・役員変更:日本で会社を設立したり、役員を変更したりする場合など、法人登記に関わる手続きで個人の印鑑証明書が必要となることがあります。
これらの手続きは、法律によって印鑑証明書の添付が義務付けられているものが多く、その重要性から代わりの書類では認められないケースもあります。しかし、海外在住者で日本の印鑑登録ができない場合は、その代替手段が用意されています。
例えば、あなたが海外在住中に日本国内にある実家を相続することになったとしましょう。遺産分割協議を進めるにあたり、他の相続人と共同で遺産分割協議書を作成し、これに署名・押印(またはサイン)し、印鑑証明書を添付する必要が出てきます。この時、あなたが日本に住民票がないために印鑑登録ができないとなると、通常の方法では手続きを進めることができません。そのため、このような状況を想定し、日本の法律では海外在住者向けの特別な手続きが設けられています。
次のセクションでは、海外在住者が印鑑証明書が必要な状況に直面した際に、具体的にどのような方法で対応できるのか、代替となる「署名証明(サイン証明)」の取得方法も含めて詳しく解説していきます。
海外在住者が印鑑証明書を取得する方法
前述の通り、海外在住で日本の住民票がない場合、原則として印鑑登録はできません。しかし、日本での手続き上、印鑑証明書が必要となるケースは少なくありません。ご安心ください、そのような場合でも対応策は存在します。主に、一時帰国して印鑑登録を行うか、または印鑑証明書の代わりとなる「署名証明(サイン証明)」を利用するかのどちらかになります。
一時帰国して取得する方法
最も確実な方法は、一時的に日本に帰国し、住民票を再登録して印鑑登録を行う方法です。
この方法の最大のメリットは、日本の実印と印鑑証明書を正規の手順で取得できるため、ほとんどすべての日本の公的手続きに対応できる点です。例えば、不動産登記など、極めて厳格な本人確認が求められる手続きでは、やはり日本の実印と印鑑証明書が最も信頼されます。
具体的な手順は以下の通りです。
- 転入届の提出:日本に帰国後、一時的に滞在する住所地の市区町村役場に転入届を提出し、住民票を再登録します。
- 印鑑登録の申請:住民票が登録されたら、同じ市区町村役場で印鑑登録の申請を行います。登録する印鑑(実印)と本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)が必要です。即日発行される場合と、照会書による確認後になる場合がありますので、事前に役所に確認しておくとスムーズです。
- 印鑑登録証明書の取得:印鑑登録が完了すれば、すぐに印鑑登録証明書を取得できます。
- 転出届の提出(再出国時):必要な手続きが完了し、再度海外へ出国する際には、忘れずに転出届を提出し、住民票を抜く必要があります。
この方法は、時間的・金銭的なコスト(航空券代、滞在費など)がかかるというデメリットがありますが、日本の公的手続きを円滑に進める上で最も確実な選択肢と言えるでしょう。特に、複数の手続きで印鑑証明書が必要となる場合や、複雑な手続きが予想される場合には有効です。
国内の代理人に依頼して取得する方法
海外在住者が印鑑登録できない原則を踏まえると、日本国内の代理人に依頼して「印鑑証明書」を直接取得することはできません。印鑑登録は本人の意思確認が必須であり、代理人による新規登録は認められていないからです。
しかし、誤解されやすい点として、既に印鑑登録をしている状態で海外に転出した場合、印鑑登録は自動的に廃止されます。そのため、海外在住中に日本の印鑑証明書が必要になったとしても、国内の親族や知人に委任状を渡して「代理で取得してもらう」ことは、原則として不可能です。
では、「代理人に依頼する」という情報がどこから来るのかというと、それは一時帰国して住民票を再登録し、その上で代理人に手続きを委任する場合、あるいは印鑑証明書の代わりとなる書類(後述の署名証明など)を代理人が利用する場合、または公正証書作成のための委任契約を結ぶ場合などを指すことがあります。しかし、これらは「印鑑証明書そのものを代理人が取得する」こととは異なりますので注意が必要です。
もし、海外在住中に日本での手続きで印鑑証明書が必要になったが、一時帰国が難しいという場合は、次に解説する「署名証明(サイン証明)」が非常に重要な代替手段となります。これは、日本の印鑑証明書と同様の効力を持つものとして、多くの公的手続きで利用が認められています。
したがって、海外にいながら日本の印鑑証明書「そのもの」を代理人に取ってもらうことはできないと理解しておくことが重要です。次に、海外在住者が印鑑証明書の代替として利用できる公的書類である「署名証明」について詳しく見ていきましょう。
印鑑証明書の代わりに使える「署名証明(サイン証明)」とは?
海外に住んでいるため印鑑登録ができず、一時帰国も難しい。でも、日本での重要な手続きで印鑑証明書が必要になってしまった――そんな状況で海外在住者が頼りになるのが、「署名証明(サイン証明)」です。これは、印鑑証明書の代わりとして、日本の多くの公的手続きで有効な書類として認められています。
署名証明書の概要と役割
署名証明書とは、あなたの署名(サイン)が確かに本人のものであることを日本の在外公館(大使館や総領事館)が証明する書類です。日本の印鑑登録制度における印鑑証明書と同様に、署名が本人の意思に基づいていることを公的に証明する役割を果たします。つまり、海外に居住していて日本の印鑑登録ができない人のために、その代わりに本人の意思確認を担保する制度として設けられているのです。
なぜこの証明書が必要なのでしょうか? 日本では、重要な契約や手続きにおいて、実印の押印とその実印が登録されたものであることを証明する印鑑証明書が本人確認の重要な手段とされてきました。しかし、海外に居住する日本人には印鑑登録の制度が適用されないため、この本人確認の手段が使えません。そこで、国際的な慣例に倣い、署名による本人確認を公的に証明する「署名証明」が導入されたのです。
この署名証明書は、法務省によって「印鑑登録証明書に代わる書面」として明確に位置づけられており、日本の不動産登記、相続、自動車の名義変更、銀行取引など、幅広い公的手続きで印鑑証明書と同等の効力を持つものとして利用できます。例えば、日本国内にある不動産の売買契約書に署名する際、印鑑証明書の添付が求められる代わりに、この署名証明書を添付することで契約が成立するわけです。
署名証明には、主に以下の2種類があります。
- 形式1(単独形式):在外公館に備え付けの署名証明書用紙に署名をし、その署名が本人によるものであることを在外公館が証明します。署名のみを証明するものです。
- 形式2(貼付形式):提出先から求められる特定の書類(例:遺産分割協議書、委任状など)に本人が署名し、その書類を在外公館が証明書の用紙に貼り付けて契印し、署名が本人によるものであることを証明します。この形式は、特定の文書への署名を公的に証明したい場合に便利です。
どちらの形式が適切かは、提出先の機関や手続きの種類によって異なりますので、事前に提出先によく確認することが重要です。
署名証明書の取得方法(在外公館での手続き)
署名証明書は、あなたが現在住んでいる国の日本の大使館または総領事館(在外公館)で取得することができます。
取得手続きは比較的シンプルですが、必ず本人が在外公館に出向く必要があります。代理人による申請は認められていません。これは、署名が本人の目の前で行われ、その場で公証される必要があるためです。
具体的な取得手順は以下の通りです。
- 必要書類の準備:
- パスポート:有効な日本のパスポートが必要です。本人確認の最も重要な書類となります。
- 住民票の除票または戸籍の附票:日本に住民票がないことを証明する書類です。本籍地の市区町村役場から取り寄せることができます。在外公館によっては不要な場合もありますが、準備しておくのが確実です。
- 公証を必要とする書類(形式2の場合):署名する対象の書類(遺産分割協議書、委任状など)。署名はこの場で公館職員の面前で行うため、事前に署名して行かないように注意してください。
- 手数料:手数料は在外公館によって異なりますが、現地通貨での支払いとなります。事前に確認しておきましょう。
- 在外公館への訪問・申請:
- 事前に在外公館のウェブサイトで、開館時間、予約の要否、必要書類の最新情報などを確認し、準備を整えます。
- 在外公館の窓口で申請書を記入し、職員の面前で署名を行います。
- 必要書類を提出し、手数料を支払います。
- 証明書の受領:
- 通常、即日発行されることが多いですが、在外公館の混雑状況や手続き内容によっては時間がかかる場合もあります。
例として、あなたがロンドンに在住していて、日本の不動産を売却することになったとします。日本の司法書士から印鑑証明書を求められた場合、ロンドンにある日本大使館に必要書類を持って行き、大使館職員の面前で不動産売買契約書(または委任状)に署名し、その署名が本人によるものであることを証明してもらいます。この「署名証明」を日本の司法書士に送付することで、印鑑証明書の代わりとして手続きを進めることが可能になるわけです。
署名証明書は、海外在住者にとって日本の印鑑証明書に代わる非常に重要な公的書類です。手続きに際しては、事前に提出先の日本の機関(法務局、金融機関、司法書士など)に「署名証明書で対応可能か」「どちらの形式が必要か」を必ず確認し、その上で在外公館に問い合わせるようにしましょう。これにより、スムーズな手続きが可能になります。
署名証明書(サイン証明)の具体的な利用シーン
前章で解説した通り、署名証明書は海外在住者が日本の印鑑証明書の代わりに利用できる重要な公的書類です。では、具体的にどのような場面でこの署名証明書が役立つのでしょうか。ここでは、その主な利用シーンを具体例を交えながらご紹介します。
不動産登記における利用
海外在住者が日本国内に所有している不動産に関する手続きでは、署名証明書が非常に重要な役割を果たします。不動産の売買、贈与、または抵当権の設定・抹消といった登記手続きでは、通常、所有者本人の印鑑証明書の提出が義務付けられています。しかし、海外在住者は印鑑登録ができないため、この署名証明書がその代替として法的に認められています。
例えば、あなたが海外に住んでいて、日本国内に持っているマンションを売却することになったとしましょう。売買契約書には売主としての署名が必要で、さらに所有権移転登記のために印鑑証明書を求められます。この際、日本の印鑑証明書がない代わりに、現地の日本大使館や総領事館で取得した署名証明書(形式2で売買契約書に署名したもの、または形式1と売買契約書への署名と指印)を提出することで、売却手続きを進めることができます。司法書士などの専門家は、この署名証明書を確認することで、間違いなく本人の意思に基づく手続きであると判断し、登記を完了させることが可能です。
このように、日本の不動産を所有している海外在住者にとって、署名証明書は不動産取引を円滑に進める上で不可欠な書類なのです。
相続手続きにおける利用
日本国内に財産を持つ方が亡くなり、海外に住む相続人がいる場合、その相続手続きにおいても署名証明書が活躍します。特に、遺産分割協議を行う際には、すべての相続人が協議内容に合意したことを示す遺産分割協議書に署名(または記名押印)し、各自の印鑑証明書を添付するのが一般的です。海外在住の相続人にとっては、この印鑑証明書の代わりが署名証明書となります。
具体的な例を挙げましょう。あなたの親御さんが日本で亡くなり、あなたが海外在住の相続人になったとします。他の兄弟姉妹と遺産分割について話し合い、合意に至った結果、遺産分割協議書を作成することになりました。この協議書には、あなたの署名と、それに代わる署名証明書が必要になります。現地の在外公館で遺産分割協議書(またはその写し)を持参し、職員の面前で署名し、その証明を受ける「形式2」の署名証明書を取得することが一般的です。この証明書を日本の相続手続きを代行する弁護士や司法書士に送付することで、あなたが遺産分割協議に正式に参加し、その内容に同意したことが公的に証明され、預貯金の解約や不動産の名義変更といった手続きが進行します。
相続手続きは時間と手間がかかることが多いため、海外からの手続きをスムーズに進める上で、署名証明書は非常に重要な役割を担います。
その他、各種契約での利用
不動産登記や相続手続き以外にも、署名証明書が必要となるケースは多岐にわたります。日本国内で金融機関との取引を行う場合や、さまざまな契約を締結する際に、印鑑証明書の代わりに署名証明書の提出を求められることがあります。
例えば、以下のような場面が考えられます。
- 銀行口座の開設・解約、送金手続き:日本の銀行に預金口座を持っている場合、その口座に関する重要事項変更や解約、あるいは高額な送金を行う際に、本人確認の一環として署名証明書を求められることがあります。
- 会社の設立・役員変更:海外在住者が日本で会社を設立する際の登記手続きや、既に設立されている会社の役員に就任・退任する際の変更登記において、印鑑証明書に代えて署名証明書が必要となる場合があります。特に、代表取締役などの重要な役職に就く場合は、厳格な本人確認が求められます。
- 各種委任状の作成:海外在住中に、日本国内の親族や専門家(弁護士、司法書士、税理士など)に何らかの手続きを委任する場合、委任状を作成し、その署名が本人によるものであることを公的に証明するために署名証明書が必要になります。例えば、税務申告を税理士に依頼する際の税務代理権限証書への署名などです。
- 裁判手続き関連:訴訟の提起や和解契約など、日本の裁判所関連の手続きにおいて、本人確認や意思確認のために署名証明書が要求されることがあります。
これらの手続きでは、署名証明書が本人の明確な意思表示を担保する重要な証拠となります。形式1(単独形式)で取得した署名証明書を、署名した書類とは別に提出する場合もあれば、形式2(貼付形式)で署名した書類そのものに証明を付ける場合もあります。どの形式が求められるかは、手続きを行う機関によって異なるため、事前に必ず確認することが大切です。
海外に住んでいると、日本の手続きで不便を感じることも多いですが、この署名証明書を適切に活用することで、多くの公的手続きを円滑に進めることが可能になります。もし何か日本の手続きで印鑑証明書を求められたら、まずは署名証明書で代用できないか、関係機関に問い合わせてみましょう。
海外在住者が印鑑登録できない場合の注意点
これまで見てきたように、海外在住者は原則として日本の印鑑登録ができず、印鑑証明書が必要な場合には「署名証明書」で代用することになります。しかし、このルールにはいくつかの注意点や例外、そして手続き上の留意事項があります。これらを理解しておくことで、不測の事態を避けてスムーズに手続きを進めることができます。
外国籍の方の印鑑登録について
本記事は主に日本国籍を持つ海外在住者向けの内容でしたが、ここで外国籍の方の印鑑登録について触れておきます。結論として、日本国内に住民登録をしている外国籍の方は、日本人と同様に印鑑登録が可能です。
これは、印鑑登録の要件が「日本国内に住民登録があること」であり、国籍は直接的な条件ではないためです。特別永住者証明書や在留カードを持って日本に住んでいる外国籍の方は、日本の市区町村役場で印鑑登録を行い、印鑑証明書を取得できます。登録できる印鑑には、氏名、氏名の一部、氏名と異なる日本における通称、または氏名と通称を組み合わせたものなど、いくつかのルールがあります。例えば、「ジョン・スミス」さんが日本で印鑑登録をする場合、「ジョン」や「スミス」、「ジョンスミス」といった名前の印鑑を登録できる可能性があります。
しかし、外国籍の方であっても、海外に転出届を提出して日本の住民票を抜いた場合は、日本人と同様に印鑑登録は抹消され、海外での印鑑登録はできません。したがって、そのような状況で日本での手続きに印鑑証明書が必要になった場合、別途、自国の公証役場や大使館で、署名証明に相当する書類を取得する必要が生じます。この場合、日本の「署名証明書」とは異なるため、日本の提出先機関がその書類を印鑑証明書の代替として認めるかどうかを、個別に確認しなければなりません。
そのため、外国籍の方も、日本に住んでいる間は印鑑登録を済ませておくこと、そして海外転出後は日本での手続きに備えて署名証明の代替となる書類の確認を怠らないことが重要です。
手続きにおける留意事項
海外在住者が日本の印鑑証明書に代わる書類(主に署名証明書)を利用する際には、いくつかの留意事項があります。これらを知っておくことで、手続きの遅延やトラブルを防ぐことができます。
- 提出先機関への事前確認が最重要:
署名証明書は多くの公的手続きで有効ですが、全ての機関や全てのケースで認められるとは限りません。特に、民間の金融機関や企業によっては、独自のルールを設けている場合があります。そのため、手続きを始める前に必ず提出先の日本の機関(例:銀行、証券会社、法務局、司法書士事務所、不動産会社など)に対し、「海外在住で印鑑登録ができないが、署名証明書で対応可能か」「どの形式の署名証明書が必要か(形式1か形式2か)」「他に代替となる書類はあるか」を具体的に問い合わせて確認することが最も重要です。この確認を怠ると、せっかく取得した署名証明書が無駄になる可能性があります。例えば、ある銀行では形式1で良いが、別の証券会社では形式2でなければ受け付けない、といったケースも考えられます。
- 有効期限に注意:
日本の印鑑証明書と同様に、署名証明書にも有効期限が設定されていることがあります。一般的には発行から3ヶ月以内とされている場合が多いですが、手続きの内容や提出先の機関によっては異なる場合があります。取得したら速やかに使用し、期限切れにならないよう注意しましょう。期限が切れた場合は、再度在外公館で取得し直す必要があります。
- 署名と筆跡の一貫性:
署名証明書に記載された署名と、実際に契約書や申請書にサインする筆跡は一致している必要があります。在外公館で署名を行う際も、普段使用しているご自身のサインを正確に行うように心がけましょう。筆跡が大きく異なると、本人確認が再度求められるなど、手続きが滞る原因となることがあります。
- 郵送にかかる時間とコスト:
海外の在外公館で取得した署名証明書を日本の提出先に送る場合、国際郵便には時間がかかります。速達サービスなどを利用すると費用も高くなるため、手続きのスケジュールに余裕を持ち、郵送方法を事前に検討しておくことが賢明です。追跡可能な国際宅配便などを利用すると安心です。
- 専門家への相談:
不動産登記や相続など、複雑な手続きの場合は、日本の司法書士や弁護士などの専門家にあらかじめ相談することをお勧めします。海外在住者特有の手続きに詳しい専門家であれば、必要な書類や手続きの流れ、注意すべき点を具体的にアドバイスしてくれます。彼らは、必要に応じて在外公館への照会なども行ってくれるため、安心して手続きを進めることができるでしょう。
これらの注意点を踏まえ、海外在住でも日本の印鑑証明書が必要になった場合は、まずは落ち着いて提出先の確認を行い、適切な方法で署名証明書を取得・活用していきましょう。
よくある質問(FAQ)
海外在住の場合、印鑑登録証明書の申請は可能?
日本国内に住民票がない海外在住者は、原則として日本の市区町村で印鑑登録を行うことはできません。すでに印鑑登録をしていた場合でも、海外転出届を提出すると自動的に廃止されます。
海外在住で印鑑証明書が発行できない場合、代わりに何がある?
印鑑証明書の代わりに、署名証明書(サイン証明)を利用できます。これは、あなたの署名が本人のものであることを日本の在外公館(大使館や総領事館)が証明する書類で、日本の多くの公的手続きで印鑑証明書と同等の効力を持ちます。一時帰国して住民票を再登録し、印鑑登録を行う方法もあります。
署名証明書はどこで取得するか?
署名証明書は、現在お住まいの国の日本の大使館または総領事館(在外公館)で取得できます。取得には有効な日本のパスポートなどが必要で、必ず本人が在外公館に出向く必要があります。
外国人が印鑑登録できる印鑑は?
日本国内に住民登録をしている外国籍の方は、日本人と同様に印鑑登録が可能です。登録できる印鑑は、氏名、氏名の一部、氏名と異なる日本における通称、または氏名と通称を組み合わせたものなど、いくつかのルールがあります。
本記事では、海外在住者が日本の印鑑証明書を必要とする場面と、その具体的な対処法について詳しく解説しました。ここでもう一度、重要なポイントをおさらいしましょう。
- 海外在住者は原則として印鑑登録ができません。日本の住民票がない場合、印鑑登録は抹消されます。
- しかし、日本の不動産売買、相続、その他各種契約などで印鑑証明書が求められるケースは多々あります。
- 主な対応策は、一時帰国して住民票を再登録し印鑑証明書を取得するか、「署名証明(サイン証明)」を利用するかのどちらかです。
- 署名証明書は、在外公館で取得でき、日本の印鑑証明書と同等の効力を持つ代替書類です。形式1と形式2があり、手続きによって適切な形式を選ぶ必要があります。
- 手続きを進める上で最も重要なのは、提出先の日本の機関に対し、事前に「署名証明書で対応可能か」「どの形式が必要か」を必ず確認することです。
- 有効期限、署名の一貫性、郵送の時間とコスト、そして複雑な場合は専門家への相談も検討しましょう。
海外に住んでいるからといって、日本の重要な手続きができないわけではありません。今回の情報が、あなたの不安を解消し、スムーズな手続きの一助となれば幸いです。もし、ご自身のケースで不安な点があれば、まずは手続きを求める日本の機関や、海外在住者の案件に詳しい司法書士・弁護士などの専門家に相談してみることを強くおすすめします。
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